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2010年12月 6日 (月)

微生物と浄化と子どもたち

川や沼をきれいにしましょう,と,EMという微生物“群”なるものの入った醗酵液やダンゴ状のものを投げ入れる活動があちこちに広まって美談のような扱いをされています.
(たとえば東京都千代田区
しかし,これには かねがね疑問 があり,私はこのことについて慎重になるべきと思っています.

微生物は環境が整わないと定着しませんし,流れている川にこのようなものを投げ入れてもそんな少量で環境が改善するものかどうか?ということを客観的にきちんと検証した例を知りません.
仮に 『きれいになった』 思えたとしても,河川は上流から下流へ綿々と流れているわけですから,上流でいろいろ努力されているかもしれませんし,気候の変化や気象の季節的変動できれいになったように見えただけかもしれません,もっとほかの要件があったかもしれません.
そういうことに目が行かないと,善い行いと信じていることが,逆に,富栄養な汚染物で汚しているだけということになりかねません.

事実,福島県ではEMの投入は逆に河川の汚濁源になりかねないという見解を出していましたし,当地でも 小川原湖の浄化について効果の裏付けがないEMには『待った』 (web.archive)がかかるなどの動きがありました.
とはいえ,多方面で学校や生徒を巻き込み,『いいこと』として無批判に行われることが多いのが実情でしょう.

最近, こちら (kikulog)の 有用微生物実験隊 というブログエントリで知ったのですが, 仙台市の大野田小学校の生徒さんたちの活動 が実にすばらしい!

子どもたちがネットで調べたら上記のEMを投げ入れるという活動が多数ヒットした,と.
これを鵜呑みにしてそれ以上考えずに『いいこと』として広げている大人たちが多い中,子どもたちは水槽で実験を繰り返します.

土木事務所へ問合せた結果,(この土木事務所の対応もすばらしいです)

『川のことに興味を持ってくれてうれしいです。ですが菌をまくことは慎重にしなくてはならないことだと思います。川はみんなのものです。どんな影響があるかまだはっきりしないものを入れることは難しいです。』

という回答をもらいがっかりしながらも子どもたちは実験を続け,水質管理センターから紹介された活性汚泥との比較実験をしたり,

『活性汚泥1リットルで処理できる米のとぎ汁は450ml/日,牛乳なら8ml/日』

など定量的な考察にまで至っています.
ここまで行けば,流れる川にイベント的にEMを投げ入れることの妥当性についても自ら考えられるかもしれません.

もちろん指導されている先生や役所の適切な対応もあってのことでしょうけど,私は本当に感心しました.
大野田小学校, Good Job です.

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科学・疑似科学」カテゴリの記事

コメント

大野田小は太白区ですな。  次男坊が大野田幼稚園でしたからご近所です。
なかなかFBな研究ですねえ。  大野田地区には笊川(ザルガワ)と言う川があるのですが、都市部を流れているだけあって汚れも酷い! 仙台市も美化に乗り出してはいたのですが外観の整備だけで水質そのものまでは手つかずでした。  河川敷は子供たちの遊び場にもなっているので「何とかしよう」と思ったのかな?
一部の町内会では炭を水中に入れるなどの手法で試したりもしているようですよ。
元は蛍も舞う綺麗な川だったそうですから復活すれば良いですねえ。

投稿: jh7めv/職場 | 2010年12月 8日 (水) 13時07分

近いよね,地図で見てそう思いました.

川にEM投げ入れるのも『善意』でやってる場合があるので批判しにくいんですよね,でも善意と正しいことかどうかは別モノだよね.

深く考えないで走っちゃってる大人は見習ってほしい.

微生物を使った浄化は,閉鎖的な場所だと効果も出しやすいんだけど
流れている川は難しいですね.
最近はカーボンファイバーとか表面積がとれるものを吊るしてバイオフィルム定着させる方法が注目されてますね.
セラミックとかプラの接触基材を沈める方法もあったんだけどヘドロで覆われると厳しいのでメンテナンスが必要.

何かをばら撒けばOKなんて,ちょっと気軽に考えすぎです.

投稿: Yamada | 2010年12月 8日 (水) 13時25分

川は底に溜まったヘドロが癌ですね、エゴや落ち込みがあって初めて水の自浄作用が始まる。
まっすぐで平らにされた川には自浄作用は期待できませんね。

投稿: JA7QQQ/8 | 2010年12月 8日 (水) 23時13分

古い話で恐縮です
ばら撒きで思い出したんですが
横浜を流れる帷子川(かたびらがわ)
あの「たまちゃん」がいた頃のこと
ミョウチクリンなグループが餌と称して
ホタテ貝を多数投げ入れた
あれなんか完全な生ごみでしたね
筋違いの話で申し訳ない

投稿: sky | 2010年12月 9日 (木) 05時50分

QQQさん,そうですね,溶存酸素濃度が確保できないと浄化は難しいでしょう.
skyさん,たまちゃんの件はまったく『そんなもので川を汚すな』で皆さん納得出来る話だったのでしょうね.
それが,EMなる効果抜群の微生物群となると『そうなんだ』と思ってしまう,そこをもうちょっと考えて欲しいですね.

微生物だけじゃなく,電磁波,遠赤外線,なんたらイオン,波動,生体エネルギー,アンチエイジング,デトックス,フリーエネルギー...etc
実在するものも無いものも,目に見えないものの周りであやしくうごめくものがたくさんあります.

投稿: Yamada | 2010年12月 9日 (木) 08時18分

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