ホメオパシーのこと
気になってチェックしていたことなのですが,だいぶ大きな動きになってきたのでちょっと書いておきたいと思います.
私の記事なんかよりもよくまとまったものがたくさんありますから,興味のある方は調べてみてください.
長妻昭厚生労働相は25日、日本学術会議の金沢一郎会長が「ホメオパシー」と呼ばれる代替医療の効果を否定する談話を発表したことを受け「本当に効果があるのかないのか、厚労省で研究していく」と述べた。視察先の横浜市内で記者団に語った。
同省は医学者らによる研究班を組織し、近くホメオパシーを含む代替医療に関するデータ集めを始める。
ホメオパシーは植物や動物、鉱物などを希釈した水を染み込ませた砂糖玉を飲む療法だが、24日に出された会長談話は「(これに頼ることで)確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性がある」と警告した。推進団体は談話に反発している。
金沢一郎氏が日本学術会議で『ホメオパシーは荒唐無稽』との談話を発表(pdf)されたことの内容には全面的に同意します.
ホメオパシーにプラセボ以上の効果はないってことはもうとっくにわかっていることですよね.
本来,薬の薬効を確かめるにはプラセボの偽薬を対照とするわけだから,プラセボ以上の効果が無いホメオパシーは『薬効がない』ということと全く同じです.
こんな自明なことに『効果があるのかないのか、厚労省で研究していく』なんてどうかしてますね,そんなことに税金を使わないで欲しい.
もっとも,長妻さんは以前もいろいろな代替医療の効果を研究していきたいと述べていて,その中にホメオパシーも候補として含めていましたね.
ホメオパシー自体は毒にも薬にもならないわけです.
同種療法といって,病状に類似した症状を引き起こす物質を元の成分の分子がひとつも残らないぐらいまで希釈し続け,しかも希釈すればするほど効果がある,と,つまりはただの水を染み込ませた砂糖玉に薬効があると主張しているわけです.
イギリスで歴史があるといっても,昔は瀉血やらとんでもない治療方が蔓延していた中でむしろ『害がない』ということがマシだっただけのものでしょう.
これを現代に持ち込んで妄信するあまり,正当な医療の機会から遠ざけられて悲劇となってしまうケースが事実としてある,これが一番の問題でしょう.
金沢氏の談話のきっかけともなった山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故(wikipedia)は新生児に与えるべきビタミンKを与えず,薬効の無いホメオパシーを与えたために起こったものでした.
「あかつき」問題を憂慮する会のサイトではがんの症状に苦しんでいた方に対して“ホメオパス”なる治療者がホメオパシーを勧め続け通常医療を一切受けずに亡くなっていった経緯が記されています.
現在は取り下げられていますが,ホメオパスと亡くなった方とのメールのやり取りが公開されていました.
その内容は目を覆いたくなるようなもので,悪化する病状に対してそれは『好転反応だからもっとがんばれ』と薬効の無いものを与え続け,また,それを信じて亡くなっていったのにはやりきれなさを感じます.
『好転反応』(「これから良くなる」というときに表れる一時的な症状の悪化を指すそうだけど..)だなんてまともな医療では使わない言葉です,がんのような病状の多くは一進一退を繰り返しながら進行していくものだから,そこに生じる思い込みがそれを信じさせてしまうのでしょう.
これまで,マスコミにホメオパシーを正面きって否定する記事は少なかったのですが,状況が少し変わってきています.
朝日新聞の長野さんとおっしゃる方の記事は妥当なものだと思います.
問われる真偽 ホメオパシー療法(asahi.com)
また,記者blogにも意気込みが感じられます.
「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」
その一
その二
その三
その四
ホメオパシーはプラセボのおまじない程度のものであり,それを承知で選択される人は自由だと思いますが,その程度のものであることを伝えず薬効をうたって招き入れる医師,助産師,団体,業者は批判されてしかるべきと思います.
ホメオパシーがこういった問題をはらむものだということがもっと普通に知れ渡って欲しくてちょっと長いエントリになってしまいました.
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