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2006年1月12日 (木)

電磁波に「予防原則」はいかがなものか

健康被害予防、電磁波対策でWHOが初の国際基準案(Yahoo!ニュース/読売)という報道がありました.

 原案は、電磁波による健康被害の有無は「現時点では断言できない」としながらも、発がん性について「(30センチ離れたテレビから受ける最大電磁波の5分の1程度にあたる)0・3~0・4μT(マイクロ・テスラ)以上の電磁波に常時さらされ続ける環境にいると、小児白血病の発症率が2倍になる」とする米国や日本などの研究者の調査結果を引用。科学的証明を待たず被害防止策を進める「予防原則」の考え方に立ち、対策先行への転換を促す。

低周波電磁界の悪影響に関しては疫学調査の統計で肯定的な結果もいくつか出ていますが,私としては少ないサンプル数,他要因の排除の困難性からあまり精度の良いものとは思えません,また,逆に否定的な調査もあるわけです.
疫学調査で信頼性が高いのは前向きコホート研究と思いますが,人に対する電磁波の影響となりますと大規模で時間のかかる研究になり,そういう調査結果はまだ出ていないのではないかと思います.

疫学調査で因果関係があるとするなら,次に,電磁波(低周波電磁界)の何がどれくらいのとき,人の何にどういうメカニズムでどのように悪影響を与えるのかということを仮説を立て,実証していくような研究がなされるべきです.
電磁波問題が言われるようになって長い時間が経っていますが,私の知る限りそういった実験研究で肯定的結果は出ていないと思います.
それゆえ『健康被害の有無は「現時点では断言できない」』とされているのでしょう.

こういった状況で「予防原則」を持ち出すのには反対です.
「予防原則」はあまりコストがかからずに効果が期待出来る事について早期に対応する場合はいいのでしょうが,電磁波(低周波電磁界)となりますと問題が極めて大きくなります.
「予防原則」でケリをつけてしまっては,他の「解明されているリスク」へ行くべき予算が減少することで全体のリスクを逆に上げてしまう可能性もあります.
正当なリスク評価の流れを止めてしまうのではないか?と危惧します.

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